整形外科医であれば、小児の骨折などを治療する機会は多いと思います。保存的に治療する場合は消炎鎮痛剤処方の必要性は少ないですが、手術を行う場合は少々やっかいです。
成人であれば、術後にロキソニン等の消炎鎮痛剤を処方することが当たり前ですが、小児の場合には消炎鎮痛剤処方によってライ症候群(Reye's syndrome)を併発する可能性があります。米国のFDAでは19歳未満の患者さんには、アスピリン含有薬品を投与しないことを推奨しているようです。
一方、わが国ではロキソニンの添付文書上で禁忌や慎重投与の扱いにはなっていませんが(小児では安全性が確立されていないとの記載は有り)、日本小児科学会のコンセンサスではやはり小児へのロキソニン投与は控えた方がよいとのことです。
小児外科では術後患者さんにアセトアミノフェンの倍量投与(20 mg/kg)で対応している施設が多いようです。周知のようにアセトアミノフェンは解熱効果は高いものの、鎮痛効果は非常に弱いです。したがって、鎮痛効果を得るために倍量投与となるそうです。
アセトアミノフェンの倍量投与で肝障害を併発しても投薬を中止すれば軽快します。ロキソニン投与でライ症候群を併発した場合の損失と比較すると、アセトアミノフェンの倍量投与の方がリカバリーが効くというのが小児外科医の言い分だそうです。
私もこの話を聞いてから19歳未満の患者さんに消炎鎮痛剤を処方せざる得ない場合には、アセトアミノフェンの倍量投与で対応するようになりました。