破傷風の発病を予防するには、破傷風トキソイドを規定の間隔で3回摂取して基礎免疫を賦与した上で、受傷時に適切な予防策を講ずる必要があります。
破傷風トキソイドの予防効果持続期間は、基礎免疫完了後5年間、あるいは追加摂取後5年間です。5年以上経過すると、血中抗体価が発病予防に必要な最低値以下となりますが、追加摂取を行うと、ブースター効果によって1週間以内に抗体価が急上昇して免疫状態になります。
このブースター効果は3~4回目の摂取後30年を経過しても発動されることが証明されています。したがって、三種混合(DPTワクチン)摂取から30年近く経過していても十分にブースター効果を期待できます。
ただし、三種混合(DPTワクチン)は1975年~1981年までは、重篤な副反応発生事故のため当時の厚生省による中止指示がありました。したがって2013年現在の時点で32歳~38歳までの方は、ワクチン接種されていない可能性があり要注意です。
創傷の状態と過去の破傷風トキソイド摂取回数に応じて、トキソイドと抗破傷風人免疫グロブリン(テタノグロブリン; 商品名はテタノブリン)の使用法を選択します。
まず、5年以内に3回以上の破傷風トキソイド摂取をしている方には両者とも投与不要です。しかし実際問題としてこれに該当するのは1~6歳児と11~16歳の方のみなので、ほぼ全例に破傷風トキソイドは必須と考えておくべきでしょう。1回に0.5ml筋注です。
次にテタノグロブリンの投与法ですが、汚染創には必須です。通常1回250 IU/ml筋注すると速やかに抗体価の血中濃度が上昇して発病阻止レベル以上に達し、約4週間効果が持続します。つまり汚染創では破傷風トキソイドとテタノグロブリンの併用投与が必要です。
開放骨折や受傷から6時間以上経過した方にはテタノグロブリン500~1000 IU/ml筋注に増量します。今回の方は受傷から6時間以上経過していたので、500 IU/ml筋注しました。 尚、広範囲熱傷患者では創面から抗毒素が漏出するので、テタノグロブリン500~1000 IU/mlを初日と3~5日後の2回使用することが推奨されています。
尚、破傷風予防ばかりに気が向いてしまいがちなのですが、通常の感染予防のために抗生剤投与は必須です。