通常、カップのリーミングは目指すべき設置角度(外側傾斜角40度、前方開角20度)で行います。私も、カップの設置角度を前方開角20度にすること自体には異論はありません。
しかしリーミングの角度に関しては、全例で前方開角を20度にすると掘削方向が正中から外れるリスクがあると考えています。
寛骨臼の前方開角は平均すると20度前後ですが、なかには10度や30度の方もいます。仮に寛骨臼の前方開角30度の方に20度でリーミングすると、寛骨臼前方がより掘削されます。
反対に寛骨臼の前方開角10度の方に20度でリーミングすると、寛骨臼後方がより掘削されます。
したがって私は術前CTで寛骨臼の前方開角を測定しておき、その角度でリーミングするよう心掛けています
臼蓋形成不全股の場合は、壁に掘り込んでいくイメージです。術前の作図から寛骨臼上縁からカップの端となる部位を計測します。
例えば寛骨臼上縁から10mmがカップの端になる場合には、10mmの平ノミをメジャー代わりにして寛骨臼内に電気メスで球状にマーキングします。
この球状にマーキングしたエッジを目安にリーミングすると、作図どおりの高位にカップを設置できます。注意点として、内板を打ち抜かないように3mm丸ノミで内板までの距離を確認しながらリーミングを行います。
若年者や男性では骨質が良好なため、リーミングの際になかなか掘削できないことがあります。特に48mm前後の最もリーマーの使用頻度が高いと思われるサイズでは、刃が鈍っているのかリーミングできないことが多いです。
このような場合、昔はフ~フ~言いながら汗だくで渾身の力を込めてリーミングしていました。もちろん、今でも汗だくでリーミングする場合がありますが、ある工夫により少しスマートになってきました。
その工夫とは、下記の2点です。
これらの工夫により硬化した表面の骨にリーマーの刃が引っかかりやすくなり、スムーズに掘削できるようになります。ただし、リーミングの技術が充分でない時期に、激しく①を行うことはお勧めしません。あらぬ方向にリーミングしてしまう危険性があるので、慣れないうちは注意が必要です。
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