私は前側方からアプローチしますが、良好な展開を得るために下記のような工夫をしています。
・ 最初は大転子先端を中心に6cm程度の皮切を加え、大腿骨を展開した時点で必要な皮切を追加する
⇒ これによって皮下脂肪の多い患者さんでも至適な皮切となる
・ 梨状窩、寛骨臼縁までしっかり関節包を切開する
⇒ 特に1~23時方向は関節包の内側まで切除してクリアランスを良くすることで脱臼しやすくなります
・ 寛骨臼を充分に展開できないときは、
① 大腿骨頚部骨切りが高位である
② 大腿筋膜張筋の切離が不充分
③ 下方関節包の過緊張
④ 大腿骨頚部の剥離不足なことが多い
⇒ 特に③の場合は横方向に緊張している下方関節包下にエレバトリウムを挿入して関節包のみ切離します。尚、この靭帯を処理する工程は、前側方アプローチに特徴的で、後側方アプローチでは必要ありません。
手術開始から30分以内のカップインプランテーション完了を一つの目安にしています。
下記は、大阪大学の菅野先生が編集された書籍です。人工股関節全置換術の書籍の中では、最もお勧めの書籍です。