尺骨神経亜脱臼は、成長期に急激に身長が伸びた方(10cm/年以上)に発生することが多いそうです。神経などの軟部組織の成長が骨の長軸方向の成長に追いつかない結果、成長期終了後も神経の緊張が残存してしまうことが原因といわれています。
治療については、①King変法 ②尺骨神経皮下前方移行術 の2つが代表的なものです。まだどちらがより望ましい治療方法であるかは結論が出ていないようですが、②尺骨神経皮下前方移行術を選択するケースが多いようです。
①King変法は、比較的小皮切で手術可能ですが、デメリットとして術後の前腕屈筋群の筋力低下や創部痛の残存が挙げられます。このよう症状は、②尺骨神経皮下前方移行術では起こり難いですが、皮切や展開が大きくなるのがデメリットです。
また、手術の際のポイントとして、中枢側の内側上腕筋間中隔および末梢側のOsborne靭帯をしっかり切除して、両端で尺骨神経のスムーズな動きを阻害しないようにする必要があります。視覚的に尺骨神経の走行が全体的になだらかな後方凸のカーブを描くようにすることが重要です。
尺骨神経は前腕屈筋群の筋膜上に前方移行しますが、二枚おろしにした皮下脂肪を前腕屈筋群起始部に縫着して尺骨神経を包み込ます。こうすることで前方移行した尺骨神経が後方に再移動しないようにします。